留学生就職支援の現状

[4]-1 採用手法と採用ポイント

企業における留学生採用の手法については、多くの企業が日本人学生と同じプロセスで採用活動を行っています。これまで1社あたりの単年度の留学生採用人数自体が少なかったため、特別な手法をとれなかったという理由が考えられます。
 しかしながら2009年頃から留学生についても採用数が増加し、留学生採用枠を日本人学生とは別に設定する企業が出始めるなど、従来の日本人と同じプロセスでの採用ではなく、優秀な留学生を正当に評価しようと、様々な新しい採用手法の試行錯誤を始める企業も出始めています。
 民間企業・団体による留学生向けの合同企業説明会も開催回数が増え、また、企業も留学生向けの新卒採用サイトを開設するなど少しずつですが、留学生にも採用情報が届く様、環境が改善しつつあります。
 また、留学生が多数在籍する大学では、積極的に自学の留学生の優秀さや企業での採用メリットをアピールし、大学内に企業を招聘し企業説明会を開催するなどの取り組みも増えてきました。しかしながら未だ多くの企業が日本人学生と同じプロセスにて留学生の採用を行っており、留学生は日本人学生と同様の就職活動準備を行わなければなりません。
 企業の留学生採用において重視される項目としては、「コミュニケーション力」、「語学力(日本語)」の2つが非常に多くの企業において必要とされています。また「バイタリティ」や「熱意」、「専門性」などを重要視する企業も多いようです。

高度外国人材の現在の採用手法と今後の採用手法
高度外国人材の採用時に重視する項目

[4]-2 必要とされる日本語能力

留学生の就職活動において、最も企業が注目している点が日本語能力です。就職活動においては、必ずエントリーシートの提出、面接というステップを踏まなければなりませんが、特に企業は採用にあたり面接を重要視するために面接時に必要とされる「聞く力」、「話す力」がなければ内定を獲得することは難しくなります。また、就業後は職種によって企業から求められる日本語力は2つに分けられます。1つは主に理系の技術系職種、研究職に多い、社内のコミュニケーション能力があれば可とするもの。2つ目は文系の営業総務職に多い、社外のクライアントや協力会社、顧客との打ち合わせや営業でのコミュニケーション能力であり、こちらはかなり高度な日本語能力が必要とされます。また、技術系職種や研究職でも管理職になる際に日本語力のレベルアップを求める企業もあります。特に文系の営業総務職においては、大学での日常会話と違いビジネスシーンで使用する日本語となるため、尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けやビジネス用語、日本企業文化を理解した上でのビジネスマナーなどが必要とされ、高い日本語能力が要求されます。また、これらの日本語能力は就職活動時においても必要になるため、在学中にレベルアップする必要があります。「アジア人財資金構想」では、ビジネスシーンで通用する日本語力の育成のための評価ツールとしてJETRO(日本貿易振興機構)が開発した「BJTビジネス日本語能力テスト」を使用し、学生のビジネス日本語能力の判断をしていました。 「BJTビジネス日本語能力テスト」は、日本語能力検定1級以上のレベルも測定できる、ビジネスシーンで通用する日本語能力を測定することができるテストです。
 企業における留学生の日本語能力に関して、日本語能力試験1級を取得していてもビジネスシーンでは能力不足という声は良く耳にします。図3-3では、企業が求める日本語能力を調査したところ、日本語能力検定N1以上が約9割を占め、内5割が日本語能力N1では計れないさらに上位のレベルが必要とされています。大学を含めた日本語教育機関には、これまでの大学での学習に必要な日本語教育に加え、卒業後にも役立つビジネスシーンで使えるビジネス日本語教育の提供が強く求められています。

高度外国人材の採用時にもとめる日本語コミュニケーションレベル

[4]-3 SPI等の能力試験

就職活動において、留学生を悩ませるのがSPI試験等に代表される日本独特の能力試験です。
 近年の就職活動において、就活ナビなどのウェブでの登録や一次選抜手法が一般的になっています。エントリーの簡便さから1人あたりのエントリー数が数10社から100社超えと多くなる傾向にあり、特に大企業では応募が集中するため面接可能な数までSPIなどのツールで機械的に絞らざるを得なくなっていることが背景にあります。
 SPI能力試験は非言語分野、言語分野に分かれており、留学生は言語の障壁からとくに言語分野での得点獲得が難しいのが実態です。
 日本企業の留学生採用プロセスは、日本人学生と全く同じ選考過程にて行う企業が大多数を占めており、また、膨大な登録者から留学生だけを振り分ける作業が物理的にできないという実務上の問題から、日本人学生SPI等の同じ能力試験を課し、その結果最初のプロセスを通過する確率が著しく低くなってしまいます。
 近年留学生採用に注力している大手製造業や小売業は能力試験の位置づけを見直し、日本人学生と同等に判断するのではなく、独自のウェイト付けを行う傾向が見られます。
 図3-4では、約5割の企業がSPI等を実施していなかったり、重要視していないと回答しています。業種別では、非製造業は製造業と比べ重視する傾向が見られます。
 今後も日本企業の採用活動においては、能力試験を継続実施していく可能性が高いため、留学生がそのための準備をすることは今後も求められると思われます。
 留学生は就職活動前に問題演習を行うなど、日本人学生以上に早期の準備が必要です。

高度外国人材の採用時におけるSPI等の能力試験の位置づけ
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