留学生就職支援の現状
[1]-1 留学生の日本での就職状況
〈ポイント〉
①留学生の日本での就職者数は8,586名。
②留学生の日本での就職希望者は約6割。就職率は約2割
2010年に、海外から日本へ留学する学生は、約14万人となりました。1983年に発表された「留学生10万人計画」は、2000年以降の急激な留学生増加により2003年に達成されました。2008年に文部科学省により新たに「留学生30万人計画」が発表となりました。
「留学生30万人計画」は、入口となる積極的な留学情報発信から入試、入学、入国各制度の改善、大学等のグローバル化の推進、宿舎、奨学金、生活支援などの受け入れ体制拡充を行い、さらに出口である雇用の促進を含めた卒業後の社会への受け入れまでの全体を視野に入れた政策です。
留学生の数は、2010年には過去最高を記録しており順調に増加していますが、出口の雇用促進については、法務省のデータ(図1-1)によると留学生等(留学・修学の在留資格を有する外国人)から企業等への就職を目的とした在留資格の変更申請件数は1999年の3,071件から2008年は、約3倍以上の11,789件に増加しています。
しかしながら、留学生の卒業(修了)者と就職者から算出した就職率(図1-2)では、2005年度の17.9%から2007年度は30.5%と2年間で10%の伸びは見られますが、依然としてリーマンショック後は2割程度しか就職できていないのが現状です。
(独)日本学生支援機構の調査では、卒業・終了後の進路希望として約6割の学生が日本での就職を希望しているので、日本での就職を希望しながら約4割しかが就職できていないというのが現状です。その要因としては、下記で詳しく説明しますが、日本独特の就職活動の形態と日本語能力の問題があると思われます。
[1]-2 留学生の日本での就職傾向
〈ポイント〉
①就職先は首都圏・大都市圏に集中(地方大学の留学生の就職活動に課題)
②中堅・中小企業への就職が約7割
就職先の所在地構成(図1-3)では、関東地域が59.9%、関西地域が12.2%と大都市圏で7割を占めています。その中で東京が約5割を占めています。
留学生の就職活動において地方大学に通う学生の就職は大都市圏の大学に通う学生に比べて非常に困難となります。
その理由としては、
①留学生向けの大規模な合同企業説明会の開催が東京・大阪地域に集中している
②留学生採用を行う企業も東京・大阪等の大都市圏に集中しており、面接に行くための交通費・宿泊費などの金銭的な負担が重い。
が挙げられます。留学生の就職支援において地方の大学は地理的な条件から民間企業や自治体で行われている留学生向けの就職支援の活用が難しく、各大学の、より一層の支援が必要となります。留学生数が多い地方の大学については、学内に留学生採用を行う企業を誘致し、企業説明会や面接などを行っている例はありますが、ごく一部に限られます。
また、留学生は日本人学生と同様に大企業志向が強く、自国でも名の知れた国際展開をしている消費財を生産している有名企業への入社意欲か高い傾向にあります。しかしながら従業員別の許可人員の構成(図1-4)では1,000人未満の中堅・中小企業が7割を占めており、またその内300人未満の中小企業が6割を占めており、理想と現実のギャップが伺えます。
これは、日本人学生にも言えることですが、求人が限られる大企業に希望が殺到し、中小企業は採用したくても希望者がいないというミスマッチを起こしていることが伺えます。特に留学生は母国の就職活動において業界研究、企業研究を行うという習慣がなく、また企業のエントリーについても、母国を含めた地域へグローバル展開をしていて、母国でも認知されている企業を中心に希望する傾向があるため、留学生のキャリアを考えた教育・支援が必要であるといえます。