留学生就職支援の現状

[2]-1 就職活動における問題点

〈留学生の就職活動における問題点〉
①就職活動に対する理解不足
②就職活動に関する情報量が少ない
③ビジネスシーンでの日本語能力の不足
④留学生向けの求人情報が少ない

留学生の就職活動について、一番の問題となるのが日本企業が独特な就職活動の形態をとっているところです。
 日本の就職活動は、「活動する期間が長い」「開始時期が早い」「選考方法が複雑」など独特の文化を持っており、海外からの留学生は理解をすることが難しいようです。
 また、企業や就職に関する情報についても日本人学生と比べて、留学生には両親・兄弟・先輩・友人などの情報が入ってくる経路が少なく、就職活動前の情報量が圧倒的に違います。そのため、留学生の多くは就職活動開始時期を逃してしまい4年生の4月から就職活動を開始したり、十分な準備ができないまま、就職活動を始めざるを得ず、最終的に就職できないこととなり、不本意なまま進学したり、母国へ帰国する学生が多いようです。
 また、就業後は社内外のコミュニケーションを日本語で行うこととなりますので、相当の日本語能力が求められます。就職活動においても、必ずエントリーシートの提出、面接というステップを踏まなければなりませんが、大学での会話と違いビジネスシーンで使用する日本語のため、尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けやビジネス用語、日本企業文化を理解した上でのビジネスマナーなどが必要とされます。特に企業は採用時に面接を重要視するために、高度なビジネスシーンでの日本語能力(「聞く力」、「話す力」)がなければ内定を獲得することは難しくなります。

外国人留学生の採用時に重視すること
就職活動で苦労したこと

留学生向けの求人情報については、近年ようやくインターネット上で留学生積極採用特集が組まれたり、企業の新卒採用ページに留学生の専用特設ページが開設されたりと、以前に比べると留学生が企業情報を探しやすくなりましたが、留学生に配慮した採用を行っている企業は、まだまだ少ないのが現状です。また、多くの留学生採用企業が日本人学生と同様の募集方法を行っているため、留学生のエントリーが可能なのか判断つかないことが多く、結果として留学生採用を積極的に行っている一部の実績ある企業に留学生のエントリーが集中する傾向が見られます。
 企業の採用ニーズについては下記で詳しく説明しますが、日本人学生が持っていない資質を留学生に求めながらも、実際は日本人学生と同等の日本語力と協調性等を満たした留学生を優先して採用する傾向が見受けられます。
 近年ようやく留学生の特性を認めて留学生に配慮した採用を本格的に行う企業が増え始め、採用手法・受け入れ体制の整備が準備され始め、今後日本企業における留学生採用枠は増加していくことが予測されます。

[2]-2 就職活動における留学生の傾向

〈留学生の就職先企業選定における傾向〉
①日本人学生以上に大企業・有名企業志向が強い
②企業の将来性と自身が活躍できる環境のマッチングを求める(キャリア意識が高い)
③グローバル展開を行っている企業志向が強い

留学生の就職先企業の選定における傾向としては、3点の特徴が見られます。
①大企業・有名企業志向
 留学生は、日本人学生と同様に大企業・有名企業を重視する学生が多いです。その要因として考えられるのが、業界・企業研究の準備不足のため大企業しか企業名を知らないことと、帰国後に再就職活動をする際、母国でも名前が知られている日本の大企業に就職していたキャリアが有効に働くと考える点が影響していると推測されます。
②企業の将来性と活躍できる環境
 留学生は終身雇用より、転職・独立などのキャリアアップ志向を持つことが多く、そのためには自分の将来に役立つ実務知識や経営者と身近に接することができる将来性のある企業を求めていますが、業界・企業研究の準備不足のため自分に合った企業を探すことができていません。また、留学生が中小企業に目を向ける様なインターンシップ等の取組が活発に行われていないこともマッチングができない要因として考えられます。
③グローバル展開企業志向
 留学生は、母国の知識や言語(母国語と英語能力)を自身の強みと感じているため、就業の際にその能力を生かすことができる母国を中心とした第3国への海外展開をしている企業を希望する事例が多いようです。

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